今回は、繊細なシルエットが美しいアンティークキャビネットのリペア工程をご紹介します。
お気に入りのアンティーク家具も、時間とともにガタがでてきているものもあります。そんな家具を、使いやすく美しい状態に戻すためにはどんなリペアが必要なのか。そんな疑問を解消していただくため、アンティークキャビネットの修理内容をご説明します。


開き戸が美しい曲線や象嵌、脚を含め細い部材でつくられているこちらのエドワーディアンのキャビネット。残念ながらよく見るとあちこちにガタが。しかし、クリーニングや塗装などリペアを施すことで、 細かなキズやよれがなくなったエレガントなものへと生まれ変わりました。
正面の写真からはわかりにくいですが、脚部分のキズや天板の汚れ、全体的な塗装を新しくすることで見違えるような輝きを取り戻しました。
つくられた当時と同じような繊細な美しさを取り戻すためには、特に全体のクリーニング、そして背板のクロスの張替えといった細かなリペアが必要です。
アンティーク家具のリペアは、自社工房を備える当店にご相談ください
専用のリペア工房を備える当店では、これまで数多くのアンティーク家具をリペアしてまいりました。
イギリスを中心としたヨーロッパへの直接買い付けを長年付続けており、輸入したアンティーク、ヴィンテージ家具は自社工房にてリペアを行っております。
アンティーク家具やヴィンテージ家具は様式や状態によって、適したリペア方法が異なります。幅広い方法の中から、お客様のご要望を叶えるのはプロの家具職人でないと困難です。自社工房を備える当店では、専門の家具職人によって最適なリペアを施します。
アンティーク、ヴィンテージ家具のリペアをお考えの際は、是非、当店にご相談ください。
自社の家具職人がリペアを担当しております。チェアの座面が破れてしまったり、キズがついてしまったりと、アンティーク家具・ヴィンテージ家具の様々なリペアに対応いたしております。お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。
1.修理前のチェックとリペア結果のご紹介


開閉部の金具にはがたつきが目立ち、扉を開閉するたびに違和感を感じるようになっています。
古くなっていた塗装や汚れを剥離し、新しく塗装することでこれだけキレイな天板にリペアすることができました。
剥離や塗装の様子は後ほどご紹介します。


こちらも天板同様に、古くなった塗装を剥離し、新しい塗装を施しました。欠けてしまっていた部分も塗装しなおすことで目立たない状態へリペアしています。


魅せる収納でもあるキャビネットのクロスが寄れてしまっていては、ディスプレイするのにも残念な気持ちになってしまいます。
新しい白色の生地を張りなおすことで、新鮮な印象にリペアすることができました。


背板は新しく製作し、棚板と同様に新しい生地を張りなおしています。キャビネットの形状から、コーナーに設置されることが多いと思いますが、裏面まで新しくなることで大事につかっていく気持ちも高まります。
当社では、修理前チェックをキチンとすることで的確なリペアを施し、家具にストレスがないようムダな解体や締め付けをしないように心がけています。
長い時間をかけてこびりついた汚れや歪みを取り除き、使いやすくて美しいアンティーク家具に生まれ変わらせていきます。
2. つづいて表面をクリーニング、
クリーニングで汚れを落とします
キズや汚れをチェックした後は、全体をクリーニングしていきます。天板は専用のクリーニング剤とスチールウールで優しく汚れを取り除きます。
開き戸の細かな部分は、クリーニング液をつけたブラシで溝の汚れを除き、本来の地肌をよみがえらせます。
この工程では、長い時間をかけて固着してしまった汚れを落とすことで、キズだと思っていたものがなくなっていることも。傷なのか汚れなのか、全体の状況を更に明確にするためにもクリーニングは欠かせません。
実はアンティーク家具は汚れを落とすだけでも綺麗になってしまうこともあります。「クリーニングのみ」のオーダーも受け付けておりますので、気軽にお申し付けください。
3. そして重要な建付け、解体と締め直し
3-1. 慎重に解体
今回のリペアでは、特に傷みが激しいクロスを張り替えるために、背板と棚板を取り外していきます。ガラス扉を外したうえで、他の部材を傷めないように丁寧に外していきます。釘で固定されていたため、無理に力をかけずにキレイに解体することができました。最後に取り残した釘を抜き取り、新しい背板をつけられる状態にして解体の工程は終了です。
エキポシ系接着剤などでリペアされていると、キレイに解体することができませんので、安易に接着剤を使用したDIYリペアはオススメしておりません。
3-2. 締め直しで、ぐらつきを取り除きます
背板を取り外した後はこんな感じになりました。このキャビネットは接合部のゆるみが少なかったため、クランプなどで締めなおす工程はおこないませんでしたが、ゆるみが認められる場合は締め直しをおこないます。事例として、サイドテーブルでご説明します。
この画像はぐらつきのあるサイドテーブルの脚部。クランプを使って固着させています。接合されている部材は経年とともにゆるんでくることがあり、放っておくと過度な荷重で崩れる可能性があります。接着力を最大限キープするため接着面をキレイにもどして固定します。
それぞれのパーツに解体したあとに、骨格となる部分をクランプで締め直すことにより全体のゆがみを補正し、すき間をなくすことで強度が増します。
4. キレイにクロスを張替える
4-1. 棚板のクロスを剥がします
棚板の寄れが生じてしまっていたクロスは、丁寧に剥がし、新しいものに張り替えていきます。接着剤や繊維の残りで凹凸のある仕上がりになってしまわないように気をつけます。
4-2. 背板の交換と新いクロスでリフレッシュ
背板のクロスは寄れに加えて木部の損傷もありましたので、新しい背板を製作することに。アンティーク家具のリペアでは、必要に応じて新しい部材をつくる場合もあります。
新しい背板となる木板をカットし、そのサイズよりちょっと大きめのクロスを用意しておきます。
キャビネット全体の色合いと近くなるように刷毛を使ってステインを塗ります。背板を新しいものに交換することで、家具全体の建付けを補強することができます。
塗装した背板とクロスを接着しカットしていきます。
新しいクロスを張り、新品のような張りのある状態になりました。交換する必要がある場合は、制作された際のオリジナルの状態をイメージしアンティーク家具のもつ雰囲気をそこなわないように心がけます。
5. ハクリ塗装と上塗り、そしてキズの補修
5-1. まずは古くなった塗装をはがします
続いては、輪染みのあった天板を剥離塗装する工程に進みます。古くなってムラができてしまった既存の塗装を、サンドペーパーなどで丁寧に剥がし、木地までしっかりとサンディングします。
ハッキリとついてしまっていた輪染みもキレイになくなり、新品のような滑らかな肌触りが蘇りました。サンディングでも消えない深いキズや細かい側面のキズの補修も、塗装を剥がしたこの際におこないます。
5-2. 塗装で色味が再生
サンディングをかけて古い塗装をはがした後に塗装をおこないます。塗装にはニスまたはラッカーをを使用し、木材の木目が美しくなるように活かします。
元の色味になるように、薄めの色で何度も塗り重ねて調整します。木目もハッキリと見て取れるようになりました。
5-3. 上塗りを行って全体の色バランスを調整
剥離しなかった部分に関しては、全体のバランスを見て適所、上塗りをおこなって整えます。
6. 組み立て工程で、ゆがみのない家具へ
6-1. 棚板と背板を取付け、扉を調整します
新しくつくった背板を取り付け、外しておいた扉も取付けます。
新調した背板を取り付けたことで、こちらのキャビネットは更にゆがみのない状態になりました。
全体をチェックした際に、金具のぐらつきによって扉の開閉に違和感があることがわかっていたので、扉を慎重に、しっかりと取付けます。
締め直し・部材の交換で、家具のバランスが本来のバランスに修正されると、微妙に変化してきた扉の建付が合わなくなってくる場合があります。その場合は蝶番の位置の微妙な調整を行います。
しかし大抵の場合、扉のぐらつきは蝶番のゆるみやネジ穴がゆるくなることが原因のことが多く、ネジを締め直すことでぐらつきのない状態に戻せる場合もあります。
もし扉自体がゆがんでしまっている場合は、蝶番の位置の移動が必要な場合もあるため、専門の修理工房にご依頼いただくことをオススメします。修理費用がかかりますが、末永くお使いいただける家具へと生まれ変わらせることができます。
6-2. 鍵を調整して使いやすい開き戸に
さすがに100年前の家具にもなりますと、取れてしまっているパーツもあります。そのよく取れてしまっているパーツのひとつが鍵の差し込み口であるエスカッションと呼ばれるパーツです。せっかくなので当時から作られている英国メーカーのものを取り付けます。
エスカッションを取り付けることで、キーホールがキリッとし、そして鍵の差し込みもスムーズになります作業をする上で負荷がかかるような場合は、装飾部分が傷つかないように、作業台に毛布を敷いて作業します。
次にロックを調整します。扉がきっちり組み合うように蝶番を調整したとしても、今度はロックが掛からなくなるなんてことが発生する場合もあります。その際はロックの位置またはロックの受け側の調整も行います。
製造された当時のオリジナルのロックは、アンティークとしては価値のあるものですが、引っかかるような感触があり内部のバネに劣化が認められる場合は取り換えをオススメしています。内部でバネが外れてしまい、ロックしたまま扉が開かなくなってしまうことがあるからです。
扉や引き出しがある家具では、建付けをしっかり調整することで使い勝手が各段によくなります。
7. ワックスをかけてリペア完了です!
ワックスでアンティークらしい艶が復活
各パーツの組み上げをおこない最終的な建て付けの確認を終えて、仕上げにワックスがけをおこないます。ワックスは表面の美化と保護が目的ですが、アンティーク家具らしい艶感は、ここで生み出されます。
全体の艶バランスがくずれてしまわないように、脚部分や扉にも丁寧にワックスをかけていきます。
商業施設のような場所で使われる場合は、ウレタン塗装のような固くて丈夫な皮膜で仕上げを行いますが、ご家庭のリビングで使用するような普段使いの場合は、ワックスでの仕上げをオススメしています。
8. リペアでこんなにキレイに
リペア後の各部分をチェック!
全体写真ではちょっとわかりにくいですが、全体のゆがみや各部材の傷、汚れを綺麗にした状態のキャビネットがこちらです。クリーニングしたことで、細かな彫りものや木目の模様が浮き立った印象を受けます。
くすんでいたクロスも新しいものに張り替えたことで鮮やかさが増し、リビングでのコーディネートに活躍してくれそうなキャビネットに仕上がりました。
剥離塗装後の天板には輪染みもなく、アンティークらしい艶感を楽しめる状態になっています。古くなった塗装をはがし、サンディングをかけることでムダな凹凸もなくなり、触れたくなるような滑らかさが生まれました。
ご家庭用で使われることを考え、ワックスで仕上げていますが、透明なウレタン塗装で表面強度を高めた仕上げも可能です。
棚板と背板のクロスを全て張り替えました。寄ってシワになってしまった部分も張り替えることでなくなりました。目立った汚れがない場合でも、どうしてもくすみや黄ばみが出てしまいます。張り替えることで印象をよくすることができます。
欠けがあった足も、補修したことで曲線の繊細な姿を取り戻すことができました。家具を移動するたびにどうしても負荷のかかる脚部分、大事にしていただきたいところです。
家具を後ろから見た姿です。背板を新しくして新品同様になりました。塗装してキレイになっただけでなく、建付けの補強としての機能もしっかりと備わりました。
全体の補修を終え、このキャビネットはさらに長く、50年でも100年でも使っていただけるアンティーク家具となりました。
9.リペアごとの料金をご紹介
今回の修理でかかる費用の明細です。
クリーニング…5,500円
建付け(扉調整)…5,500円
塗装(天板剥離塗装・ワックス仕上げ)…22,000円
クロス張替え…23,100円
特殊加工(欠損パーツ制作 カケ、エスカッション取付)…13,750円
合計69,850円
自社の家具職人がリペアを担当しております。チェアの座面が破れてしまったり、キズがついてしまったりと、アンティーク家具・ヴィンテージ家具の様々なリペアに対応いたしております。お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。
※ぐらつきや開口部の調整だけを修理する「エコノミーパック」や、塗装面のメンテナンスも追加した「スタンダードパック」もご用意しております。詳しくはお問い合わせください。