今回は、ツイストレッグが可愛らしい、こぶりなアンティークサイドテーブルのリペアについてご紹介します。 こぶりとはいえ、定番の装飾でもあるツイストがあしらわれたサイドテーブルは、ベッドやソファの側で活躍してくれそうです。
シンプルな構造のサイドテーブルも、しっかりとリペアすると何段階もの工程が必要になりますが、今回の記事で細かくご説明します。 サイドテーブルではありますが、基本構造はテーブルと似た家具ですので、テーブルのリペア内容と同じ内容が多くなっています。アンティークテーブルのリペアのご相談を多くいただきますので、今回の記事でリペア前の不明な部分が解消されればと思います。 内容がわかりにくいアンティーク家具のリペアですが、今回の記事を読んでいただくことで、ちょっとでも “修理をすること” が身近なものになってくれれば幸いです。


可愛らしいシルエットのサイドテーブルも、長い時間をかけてできてしまったキズや変形が多く、このままでは使いづらい状態になっていました。一見してわかるぐらいに両脇が浮き上がってしまっている天板の反りや、天板がのっている幕板や脚部分のこすれが目立ってしまってちょっと可愛そうな状態に。
リペア後の画像をみていただければわかるように、リペアすることで天板や脚のキズが目立たないようになりました。アンティークらしい艶がああり、サイドテーブルの可愛らしいシルエットが浮き立つように。ディスプレイするのが楽しくなりそうですね。
自社の家具職人がリペアを担当しております。チェアの座面が破れてしまったり、キズがついてしまったりと、アンティーク家具・ヴィンテージ家具の様々なリペアに対応いたしております。お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。
1.修理前のチェックとリペア後の状態をご紹介
天板はキズが目立ちます


長い時間でついてしまった天板のキズが目立ちますね。波状に細工された可愛らしいシルエットもところどころ塗装が剥がれてしまっています。大きな凹みはないものの古くなった塗装を剥がして塗装し直すことでキレイな状態へ戻します。
リペア後の天板は、目立っていた大きなひっかきキズも目立たなくなり、アンティークらしい美しい木目が楽しめるようになりました。お気に入りのアイテムを飾ったり置いたりして楽しむサイドテーブルの天板がキズだらけではせっかくの楽しみを味わえられませんからね。
脚の細かなキズは塗装でキレイに


脚部分も天板同様に至るところにキズができてしまっています。ワックスなどメンテナンスされないで使われていたようで、素地の木肌が露出しています。今回は塗装してからワックスで仕上げ、多少の引っ掛かりでは木肌が露出しないようにリペアしてあげます。
リペア後には、至る所についていたキズやカケも目立たないようになっています。ツイストの装飾も、キズがなくなったことでアンティークらしい艶がでて、可愛らしいシルエットに目がいくようになりました。
天板の反りは解体して組みなおし
天板の隅が幕板と離れてしまうほど、大きく反ってしまっています。このような反りは現行の家具では珍しいのですが、湿度が異なるヨーロッパからはるばる船便で運ばれ、日本で使われはじめたアンティーク家具ではときどき起こってしまいます。このような状態は、一度解体したうえで組み直して平滑な状態に戻します。こちら1枚板ではなく3枚で組まれた天板で、キレイに戻して使いやすい状態に戻してあげましょう。
2.最初はクリーニングと建付けの調整をします
2-1.リペアの始めは全体をクリーニング
スチールウールやブラシを使って、塗装面全体をクリーニングしていきます。専用のクリーナーを使って、古くなったラッカーやウレタン塗料、ワックスをおとし、こびりついたホコリやシミを抜いていきます。スチールウールで汚れを落とす際は、木目の流れとスチールウールの繊維の流れを直角になるように角度を合わせて磨きます。直角にすることで、木目に詰まった頑固な汚れも “こそいで” 落とすことができるんです。ご自身でクリーニングする場合は木目や繊維を痛めてしまうこともありますのでご注意ください。
2-2.キレイになった家具を解体します
リペア前のチェックで目立っていた天板の反りをなおすため、一度全体を解体します。天板のグラつきをなおすには、天板を外して水平にした上で、幕板という天板の乗っている部分を締め直す工程が必要になります。幕板を調整してあげて、まずは全体のグラつきがないようにしなければなりません。脚部分や天板をゴム製ハンマーで優しくたたきながら、壊れてしまわないように外します。
すべての部材を解体して、ひとつひとつの部材をチェックします。部材の数自体は比較的少なくシンプルな構造となっていますが、天板がきちんと水平になるように、全体を調整する必要があります。シンプルだからこそ、部材ごとの細かな歪みで使い勝手が悪くなってしまいますので、水平や直角といった接着面の角度を丁寧に調整する必要があります。
2-3.天板の反りを調整します
天板に定規をあててみると、両端の部分が上がってしまっていることがわかります。今回は両端に切れ目を入れて、反ってしまった部分を下げるための調整を行います。長い年月の使用によって起こってしまう変形は家具の置かれている環境によって異なり、リペアの内容も家具によって変わります。
テーブルソーで天板の裏面に切れ目を入れています。反っている部分を無理に下げようとすると天板自体が割れてしまう恐れがありますので、“切れ目” を入れて無理のないように調整します。
水平な作業台の上でクランプを使い入念な圧着を行います。天板に入れた切れ目には接着剤と木粉を使ってリペア後に目立たないような処理をします。クランプを使った圧着や調整の方法は、家具の状態やリペア内容によって異なり、使い勝手に直結する重要な工程です。
2-4.脚部分の修復
4本ある脚のうち、1本が折れてしまっています。これからもしっかり使っていけるようにきちんとリペアします。脚部分の修復の場合は新しい部材を作製することも多いのですが、ツイストの部分が折れてしまっていますので、既存の部材をキズが目立たないように修復します。アンティーク家具の装飾は職人の手仕事で繊細につくられていることが多く、新しい部材を作成すると大幅にコストアップしてしまいますので、今回は継ぎ目を目立たないように修復し仕上げます。
折れてしまっている脚に鉄柱を入れて修復しています。折れてしまった部分を接着剤で継ぐだけでは強度に不安が残りますので、心材として鉄柱を入れて補強します。こちらも木粉を使って、キズが目立たないように仕上げていきます。これからも長く使っていただけるようなリペアすることを心がけています。
2-5.全体を締めなおして使いやすい家具に
天板を支える幕板部分をクランプをつかって締めなおします。全体を解体したあとに、新しい接着剤とクランプを使って水平と直角を確認しながら調整する必要があります。脚ごとに歪みは異なるため、一度解体してからの調整ではじめて水平が保たれるようになります。
3.古い塗装を剥がしてキレイな木肌に
3-1.天板の古い塗装を剥がします
クリーナーで一度きれいにした天板は、よく乾燥させてから全体をサンディングします。サンディングで表面を均一にならし、塗装するために下地を整えていきます。反りをなおすために切れ目を入れましたので、サンディングして平滑な状態へ近づけていきます。
サンダーでの研磨に続いて、手作業で調整します。手作業で細かく研磨することで、サンダーをかけた跡が残ってしまわないように仕上げます。サンダーの跡は、塗装にムラを生んでしまい、仕上りを悪くしてしまうので入念に跡を消しながら均一な状態に仕上げます。
3-2.脚部分も古い塗装を剥がして剥離終了です
脚の貫や幕板部分も、天板と同じように古い塗装を剥がします。無理な力がかかってしまわないように、細かな部材はサンドペーパーを使った手作業で剥離を行います。細かな角度を確認しながら建付け調整を狂わせてしまわないように、細心の注意を払って塗装を剥がしていく必要があります。
アンティーク家具のリペアは、至るところに手での作業が発生し、どうしても手間や時間がかかります。手間や時間をかけるからこそ、ずっと昔につくられたアンティーク家具でも元のキレイな状態に戻すことができるんですね。
4.塗装で輝きを取り戻す
4-1.天板の塗装
サンディングをかけて古い塗装をはがした後に、天板の塗装を行います。まず油性の木材用着色料(またはステイン)を使い、リペア前の元の色味に近くなるように調整します。反りをなおすために入れた切れ目も、研磨と塗装を施したことで目立たないようになりました。
つづいてラッカー塗料を使って汚れやキズが付きにくいように仕上げていきます。木の質感をそこなわないラッカーでの塗装を行うことで、アンティークらしい艶と耐久性をもたせることができます。艶の加減や、耐久性をもたせるためのラッカー、ウレタンでの塗装方法については、お客様ごとに相談させてもらいながらリペア内容を決定します。塗装によって印象が変わりますので、コーディネートする他の家具との相性や、好みの塗装についてご要望いただければと思います。
4-2.幕板や貫の塗装
今回のリペアでは、貫や幕板部分についてはキズが目立ちましたので剥離し再塗装を施しました。家具の側面にあたる幕板や貫は、キズや汚れが目について、汚れた印象を与えがちですので、天板同様に丁寧に塗装します。元の塗装が残ったツイスト部分に近い箇所ですので、塗装と乾燥を繰り返して色味がズレてしまわないように進めていきます。
4-3.脚部分の塗装
脚のツイスト部分は元の塗装を生かしたまま、艶出しとキズを修復するための塗装をします。アンティーク家具の装飾部分は細かな凹凸に光があたり、キズや塗ムラが目立ちやすい場所でもありますので、他の部分同様に何度も塗り重ねて耐久性の高い塗装を施します。
5.仕上で元の状態よりキレイに!
タッチアップでキズ跡をキレイに
折れを修復した脚は、塗装の上から入念にタッチアップしてキレイな状態に仕上げます。鉄柱を入れて修復したことで、テーブルとして安心して使っていただけるようになりましたので、タッチアップでもきちんとキレイな状態に戻してあげます。キズが目立たないように、元の色味に近い塗料で何度も塗り重ねます。
こちらがタッチアップする前の状態です。写真中央に、継ぎ目の塗装されていない木肌の黄色い部分が露出してしまっています。他の部分がキレイに塗装されているので目立ってしまっており、タッチアップしてキズが無かったように仕上げてあげます。
専用の塗料を使ってタッチアップした後の状態です。継ぎ目の木肌がでていた状態から、キズがどこにあったのか目立たないように塗装されています。手間をかけて何度も塗り重ねることで、アンティーク家具も元のキレイな状態に戻ってくれます。
長い間使うことで生じてしまったキズやシミも、リペアすることで元の状態に戻すことができますので、今回の記事を参考に、是非あきらめないでご検討いただければと思います。
ワックスで仕上げます
ラッカー塗装していない脚部分はワックスで仕上げます。ワックスを塗ることで皮膜をつくり、水や熱からアンティーク家具を守ってくれます。アンティーク家具の塗装では自然素材の塗料をつかうことが多く、耐水性や耐熱性を高めるためにワックス仕上を施します。
6.リペアでこんなにキレイに
6-1.リペア後の各部分をチェック!
リペア前に比べて、天板の反りと脚の折れを修復した状態のサイドテーブルがこちらです。至るところにキズやシミができてしまっていましたが、サンディングと塗装を施したことでアンティークらしい艶が戻りました。キズがなくなったことで木目の美しさが際立ち、リビングやダイニングのコーディネートで活躍してくれそうなサイドテーブルに仕上がっています。
古い塗装で凹凸ができてしまっていましたが、研磨を繰り返すことで滑らかな肌触りが復活しました。均一に塗装されたことで、つくられた当時のように木目がハッキリと浮き立っています。天板はラッカー塗装で仕上げていますので、キズや水にも強くほどよい輝きをもった美しい天板として生まれ変わっています。
長い時間でついてしまったキズやカケは、手作業での細やかな研磨で滑らかな木肌にリペアされています。折れてしまっていた脚の継ぎ目も目立つことなく、ツイスト部分の輝きが印象強い仕上りになりました。脚部分は全体をワックスで仕上げていますので、水や熱に強く、これからも長く使っていただけるサイドテーブルとなりました。
6.リペアごとの料金をご紹介
今回の修理でかかる費用の明細です。
クリーニング…3,300円
建付け(バラして再接着・天板ソリ補修)…15,400円
塗装(天板剥離塗装・上塗り・ワックス仕上げ)…26,400円
特殊加工(脚補修)…11,000円
合計56,100円
その他、アンティーク家具・ヴィンテージ家具のリペア(修復)についてご覧になりたい方は、こちらのページをご参照ください。
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